採択課題要旨

連番
000015
研究課題名
自発報告データベースを用いた研究の実態とそのあり方に関する検討
代表研究者
酒井 隆全(名城大学薬学部)
要旨
課題研究の趣旨:
 国内の自発報告データベースを用いた研究を収集し、統計解析および結果の解釈の妥当性や設定された研究仮説に自発報告データベースを用いることの妥当性などの観点から分析し、望ましい研究のあり方を検討する。

課題研究の背景(必要性):
 自発報告データベースは世界各国で構築され、安全性監視活動に活用されている。日本においては、自発報告データベースは主に規制当局や製薬企業の内部で解析・活用されてきたが、平成24年より Japanese Adverse Drug Event Report database(JADER) という名称でデータセットが公開された。これにより大学の研究者や医療機関に勤務する薬剤師も利用可能となったため、この数年で、学会発表が盛んに行われている。しかしながら、自発報告データベースには、報告バイアスに影響されること、頻度を算出するための分母がないことなど、様々な限界点がある。この限界点に留意し、身長に解釈されるべきであるが、限界点に配慮されずに利用されることがある。
 これまでに JADER を用いた研究発表を網羅的に収集し、JADER がその研究目的に見合った研究材料であるか、統計解析手法は妥当であるかなどの観点から分析を行った報告はない。今後 JADER を用いた研究発表がますます盛んになっていくと予測され、その研究発表における留意点を明らかにすることは重要と考える。

課題研究の目的(期待される成果):
 課題研究の目的は、JADER を用いた研究を対象とした実態調査を行い、その問題点を明らかにすることで、JADER を用いた研究の望ましいあり方を示すことである。
 本課題研究の成果物として完成した留意点リストを公表することで、今後の JADER を用いた研究の質的向上が期待できる。また JADER を用いた研究結果を参照する側にとっても、結果を適切に解釈するためのツールとなることが期待される。
 また、医療現場において、医薬品に関するクリニカルクエスチョン(CQ)が生じる機会は非常に多い。CQ に基づいてリサーチクエスチョン(RQ)を設定し、臨床研究を実施することは、医療現場の薬剤師の重要な役割の1つである。しかしながら、臨床研究には労力を要すること、必ずしも期待した結果が得られるとは限らないことなど、RQ を設定して臨床研究を行うに至るまでに多くの障壁がある。安全性に関する RQ であれば、JADER を活用して RQ の妥当性の裏付けを行うことで、臨床研究の実施可能性を高めることができると考えられる。本課題研究により JADER の適切な活用を促進することは、医療現場における臨床研究を促進する可能性がある。
設置期間
平成 29 年 4 月 1 日~平成 30 年 3 月 31 日
資料