課題研究成果報告

連番
000008
代表研究者氏名
酒井 隆全
研究代表者所属機関名・役職
名城大学薬学部 医薬情報センター
課題研究班メンバー (代表者:○) ※所属は申請時点
○酒井 隆全1)、大津 史子1)、関谷 泰明2)、後藤 伸之1)
1)名城大学薬学部 医薬品情報学研究室、2)岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科 医療情報学専攻 生命情報研究領域
課題研究名
FAERS を用いた自発報告データベースにおける周産期の有害事象報告の現状と分析
設置期間
平成26年4月1日~平成28年3月31日
課題研究の背景及び目的

1.課題研究の成果
【目的】
妊娠中の女性及び胎児、新生児に対する薬物の安全性情報は、十分とは言い難い。近年、特殊人口における安全性監視活動として有害事象の自発報告の活用が注目されている。しかし、妊娠に関連する報告事例(「妊婦報告」)の全体像は未検討である。そこで、妊娠に関連する有害事象の報告実態を明らかにすることを目的として、FDA Adverse Event Reporting System(FAERS)に収載されている「妊婦報告」を抽出し、調査を行った。
【方法】
FAERSから「妊婦報告」の抽出方法を検討するために、妊娠中の薬剤曝露を示す基本語(PT)を用いた抽出、標準MedDRA検索式(SMQ)を用いた抽出をそれぞれ行い、抽出された報告事例を精査した。次いで、抽出された報告事例を調査対象とし、報告実態の調査を行った。調査項目は、報告様式、有害事象の分類とした。
【成果】
妊娠中の薬剤曝露を示すPTを用いて抽出を行った結果、報告年に偏りが認められた。SMQを用いると、報告年の偏りは認めず、より多くの報告事例を抽出できた。
集計対象となった「妊婦報告」として47,665事例が抽出された。報告様式は約80%が緊急報告であった。有害事象の分類の結果、「妊娠/分娩に関する障害」が14,629事例、「流産及び死産」が17,300事例、「胎児障害」が6,971事例、「新生児障害」が4,712事例、「先天異常」が6,883事例、「その他」が9,037事例であった。
【考察とまとめ】
「妊婦報告」の抽出では、SMQを用いて抽出を行うことで、PTのみで抽出を行った場合に抽出できていなかった報告事例が抽出できたと考えられた。
 「妊婦報告」の報告様式は緊急報告が多く、各国の報告基準に由来すると考えられた。有害事象は「妊娠/分娩に関する障害」、「流産及び死産」の報告事例が多かった。児の障害である「胎児障害」、「新生児障害」、「先天異常」はそれぞれ同程度の報告数であった。胎児や新生児への影響については情報が収集されにくく、これらを解析することは安全性監視活動において有用であると考えられた。
2.研究発表
[学会発表]
1. 酒井 隆全、大津 史子、関谷 泰明、日野村 靖、後藤 伸之. FAERSを用いた自発報告データベースにおける周産期の有害事象報告の現状と分析.(口頭) 第 18 回 日本医薬品情報学会総会・学術大会、2015 年 6 月 28 日、岡山大学創立五十周年記念館
2. 酒井 隆全、大津 史子、関谷 泰明、日野村 靖、後藤 伸之. FAERSを用いた自発報告データベースにおける周産期の有害事象報告の現状と分析.(口頭) 第 19 回 日本医薬品情報学会総会・学術大会、2016 年 6 月 4 日、昭和薬科大学
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