課題研究成果報告

連番
20
代表研究者氏名
大原 宏司
研究代表者所属機関名・役職
奥羽大学薬学部 講師
課題研究班メンバー (代表者:○) ※所属は申請時点
課題研究名
英語臨床試験論文の読解力養成のためのe-leaming開発とその教育効果の検証
設置期間
2020年4月1日〜2021年3月31日
課題研究の背景及び目的
【研究の背景(必要性)】
 我々は、米国の薬剤師と比較して日本の薬剤師は臨床試験の論文を批判的に読む習慣があまりないことを明らかにした。さらに、読む習慣があまりない理由として、批判的吟味の方法を大学教育で学んでいないことと言語の熟達度問題が判明した(医薬品情報学,19(4),180-87,2018)。本国でも根拠に基づく医療(EBM)の必要性が叫ばれて久しく、その重要性が啓発されているものの、薬剤師にどの程度浸透し、かつ実際の医療現場でEBMとしての処方提案・設計および服薬指導等が実践されているかは不明である。
 臨床試験の論文読解教育については、薬学教育の中で医薬品情報学の一環として試みられているが、これらの教育が広く浸透しているとは言い難い。加えて、EBM教育の現状に関する実態調査では、薬学教育全般においてEBM教育に十分な時間は確保できておらず、未だ概略の教授に留っている可能性があるとの指摘がなされている(J. Therapy,96,1692-1695,2014)。EBMの実践においては、継続的な臨床試験論文の読解、評価および臨床業務への活用が重要となる。よって、薬剤師が臨床試験の論文を読むことの重要性を認識し、かつ論文の批判的吟味についてもスキルアップを図る必要がある。
1.課題研究の成果

【目的】我々は英語の臨床試験の論文を読む習慣があまりない理由として、論文の批判的吟味法を大学で学んでいないことや言語の問題があることを明らかにしている。そこで、英語の臨床試験論文の読解力を養成するためのe-learningの開発を目指す。
【方法】「①英語論文で汎用される表現、②医療英単語の成り立ち、③英語の臨床試験論文の批判的吟味の方法」のPower Pointファイルを作成し、音声入り動画としてe-learning教材を作成した。また、無作為にコースI(受講群で①②③に関するテストを受講前後で1回ずつ実施)とコースII(対照群に同テストを期間を空けて2回実施)にクラス分けし教育効果を検証した。受講群と対照群における事前・事後アンケート間の統計解析は、カイニ乗検定にて行った。また、事前・事後テスト間の統計解析は、Student t検定にて行った。統計学的有意水準は、危険率5%未満の場合を有意差ありとした。
【成果】受講群(12名)における事前テストの平均スコアは(20点中)12.8±2.0、事後テストの平均スコアは16.5±5.1あった(P=0.012)。一方、対照群(20名)における1回目のテストの平均スコアは15.8±2.8、2回目のテストの平均スコアは15.3±3.1であった(P=0.417)。また、「あなたは、適切に臨床試験の論文を検索することができますか?」の問いに対する7段階スケールの回答(1.できない 7.できる)において、受講群の中央値は「4」であるのに対して対照群の中央値は「3」であった(P=0.026)。次いで、「あなたは、臨床試験の論文の検索方法を職場の薬剤師に教えることができますか?」の問いに対する回答(1.できない7.できる)において、受講群の中央値は「3」であるのに対して対照群の中央値は「1」であった(P=0.028)。
【考察】受講群において、テストスコアが有意に上昇したこと、また、論文検索やその方法についての自信が有意に向上したことからe-learningが英語の臨床試験論文の読解力養成において一定の効果を与える可能性が示唆された。

2.研究発表
資料