課題研究成果報告

連番
21
代表研究者氏名
古堅 彩子
研究代表者所属機関名・役職
北海道大学大学院薬学研究員 助教
課題研究班メンバー (代表者:○) ※所属は申請時点
課題研究名
ベンゾジアゼピン(BZ)受容体作動薬の授乳期における医薬品情報の構築 〜乳汁移行性、関連因子、ならびに安全性の調査〜
設置期間
2020年4月1日〜2021年3月31日
課題研究の背景及び目的
【課題研究の背景(必要性)】
 母乳育児は、母体および乳児の双方の健康に利点があるため推奨されている。しかし、薬物治療中においては、リスク・ベネフィットを適切に評価するための十分な情報が得られない場合もある。
 一方、周産期におけるメンタルヘルスケアの重要性が着目されている。また、精神疾患を有する妊婦。授乳婦の場合、向精神薬をはじめとした種々の薬剤が使用されることもある。不眠症治療や抗不安薬として古くから使用されているベンゾジアゼピン(BZ)受容体作動薬は、挙児希望の女性や妊婦・授乳婦に対しても処方される。本邦において、種々のBZ受容体作動薬が存在しており、ロラゼパムやアルプラゾラムなど乳汁移行性に関するヒトデータが報告されている薬剤もある。一方で、ヒト乳汁移行性および臨床における使用経験に関する詳細なデータがない薬剤も多く存在しているのが現状である。また、乳汁移行性に関する定量的データと臨床的影響の両面から授乳期の安全性について検証された例は十分とは言い難い。
【課題研究の目的(期待される成果)】
 本研究は、各BZ受容体作動薬のヒト乳汁移行性、ならびに授乳が母児へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。また、各薬剤の移行性の差および関連因子についても評価を行う。    
 本邦において使用されるBZ受容体作動薬について、乳汁中および血漿中濃度をliquidchromatogaphy/tandemmassspechfometly(LC/MS/MS)で測定し、乳汁への移行のしやすさを示すMilk/Plasma比(M/P比)、および児の母乳を介した薬剤曝露の指標であるRelativelnfantDoserm)を算出する。また、BZ受容体作動薬を服用中の授乳婦および児に対する影響を、診療録情報および母親との面談・アンケートにより調査する。また、化合物の各種性質(物性、薬物動態学的性質)や母体側の各種要因とM/P比、RIDとの相関性を評価することで、移行性に寄与する関連因子の有無について評価する。
 本研究の進展は、各薬剤の授乳期における医薬品情報の構築、ひいては適切な薬物治療の実施や母乳育児の推進に貢献し得ると考えられる。
【キーワード】
BZ受容体作動薬、授乳、乳汁移行性、母乳への影響
1.課題研究の成果

【目的】本研究は、ベンゾジアゼピン(BZ)受容体作動薬のヒト乳汁移行性、ならびに授乳が母児へ及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】分娩前から薬剤を服用している患者を対象とし、分娩数日後および-カ月検診時に血漿と乳汁を採取した。LC/MS/MSにより各薬物濃度を測定し、Milk/Plasma(M/P)比およびRelative lnfant Dose(RID)を算出した。また、分娩数日後および-カ月後における母児の状況をカルテ調査した。
【結果】11症例(対象薬剤8種類)について薬物濃度測定およびカルテ調査が完了した。全ての薬剤において、M/P比は1以下であり、薬剤内服前後で一定であった。分娩数日後におけるRID(%)は、alprazolam:3.8,9.3(n=2)、brotizolam:2.3(n=1)、cIonazepam:4.6(n=1)、cIotiazepam:2.5(n=1)、etizolam:0.6(n=1)、ethyl loflazepate:11.4,11.9(n=2)、flunitrazepam:1.6,2.5(n=2)、lorazepam:2.1,2.7,4.4(n=3)と算出された。Ethyl loflazepate以外は、リスク評価の基準とされる10%未満であった。分娩一カ月後における母体精神状態は、8例で良好、3例で悪化した。薬剤内服量は、2例で増量、減量1例、8例は変化しなかった。4症例は一カ月検診時までに母乳育児を中断していた。母乳を介した薬剤の影響を懸念する症状を示す児はおらず、体重増加量にも問題はなかった。
【考察とまとめ】今回解析した薬剤について、母乳を介した児の摂取量は少なく、ほとんどの症例で薬物治療と母乳育児は両立し得ると考えられた。しかし、現時点における症例数は十分ではなく、今後更なるデータの蓄積を進める必要がある。

2.研究発表
資料