採択課題要旨

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000016
研究課題名
データマイニング手法を用いた副作用発現リスクの定量的評価モデルの開発~ガンシクロビル誘発性血小板減少症発現割合の推定モデルの構築~
代表研究者
今井俊吾(北海道大学病院薬剤部)
要旨
データマイニング手法の一つである Decision tree model を用いて、ガンシクロビルによる血小板減少症発現割合を定量的に推定可能なモデルを構築する。構築されたモデルの内的および外的妥当性を評価することで、本手法の有用性について検討する。
設置期間
2018年4月1日~2019年3月31日
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000015
研究課題名
自発報告データベースを用いた研究の実態とそのあり方に関する検討
代表研究者
酒井 隆全(名城大学薬学部)
要旨
課題研究の趣旨:
 国内の自発報告データベースを用いた研究を収集し、統計解析および結果の解釈の妥当性や設定された研究仮説に自発報告データベースを用いることの妥当性などの観点から分析し、望ましい研究のあり方を検討する。

課題研究の背景(必要性):
 自発報告データベースは世界各国で構築され、安全性監視活動に活用されている。日本においては、自発報告データベースは主に規制当局や製薬企業の内部で解析・活用されてきたが、平成24年より Japanese Adverse Drug Event Report database(JADER) という名称でデータセットが公開された。これにより大学の研究者や医療機関に勤務する薬剤師も利用可能となったため、この数年で、学会発表が盛んに行われている。しかしながら、自発報告データベースには、報告バイアスに影響されること、頻度を算出するための分母がないことなど、様々な限界点がある。この限界点に留意し、身長に解釈されるべきであるが、限界点に配慮されずに利用されることがある。
 これまでに JADER を用いた研究発表を網羅的に収集し、JADER がその研究目的に見合った研究材料であるか、統計解析手法は妥当であるかなどの観点から分析を行った報告はない。今後 JADER を用いた研究発表がますます盛んになっていくと予測され、その研究発表における留意点を明らかにすることは重要と考える。

課題研究の目的(期待される成果):
 課題研究の目的は、JADER を用いた研究を対象とした実態調査を行い、その問題点を明らかにすることで、JADER を用いた研究の望ましいあり方を示すことである。
 本課題研究の成果物として完成した留意点リストを公表することで、今後の JADER を用いた研究の質的向上が期待できる。また JADER を用いた研究結果を参照する側にとっても、結果を適切に解釈するためのツールとなることが期待される。
 また、医療現場において、医薬品に関するクリニカルクエスチョン(CQ)が生じる機会は非常に多い。CQ に基づいてリサーチクエスチョン(RQ)を設定し、臨床研究を実施することは、医療現場の薬剤師の重要な役割の1つである。しかしながら、臨床研究には労力を要すること、必ずしも期待した結果が得られるとは限らないことなど、RQ を設定して臨床研究を行うに至るまでに多くの障壁がある。安全性に関する RQ であれば、JADER を活用して RQ の妥当性の裏付けを行うことで、臨床研究の実施可能性を高めることができると考えられる。本課題研究により JADER の適切な活用を促進することは、医療現場における臨床研究を促進する可能性がある。
設置期間
平成 29 年 4 月 1 日~平成 30 年 3 月 31 日
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000014
研究課題名
医療用添付文書記載要領および薬物相互作用ガイドライン等の改訂をふまえた新しい添付文書情報に関する調査分析
代表研究者
猪川 和朗(広島大学大学院臨床薬物治療学)
要旨
課題研究の趣旨:
「医療用医薬品添付文書記載要領」、「薬物相互作用」および「母集団薬物動態・薬力学解析」ガイドラインの改訂中に、代表的医薬品で必要十分な記載内容、不足データ等を具体的に示すことは、添付文書情報の適正充実化に資する。

課題研究の背景(必要性):
 薬物相互作用に関する情報は「薬物相互作用の検討方法について」(平成13年)により示され、薬物の吸収、分布、CYP等の薬物代謝や排泄での薬物相互作用評価の原則、臨床試験実施タイミングとデザインが示されている。約15年が経過し、海外のガイドラインの動向やトランスポーター等の科学的知見の集積をふまえ、平成25年に改定案が提示された。平成26年7月には「医薬品開発と適正な情報提供のための薬物相互作用ガイドライン(最終案)」が公表された。また「医薬品の臨床薬物動態試験について」(平成13年)も改訂中で「母集団薬物動態・薬物学解析ガイドライン(案)」が意見募集された。
 添付文書の情報は「医療用医薬品添付文書の記載要領について」、「医療用医薬品の使用上の注意記載要領について」(平成9年)、「医療用医薬品添付文書の記載要領について」(平成9年)で示されている。約20年が経過し医療環境が変化したため「医療用医薬品添付文書の記載要領改訂案に係る意見の募集」(平成28年6月)が示され、平成28年度通知、平成31年度施行が予定されている。しかし、これら全ての改訂が整合する添付文書情報の具体的内容は示されていない。

課題研究の目的(期待される成果):
 改訂添付文書記載要領案では事項・内容が抜本的に大改訂されており、薬物相互作用や薬物動態の情報提供は多様で多岐にわたるため、特記項目(番号45、214-217、219、367など)を含めた網羅的かつ医療従事者等に有用で理解しやすい添付文書記載が求められる。そこで本課題研究では、主な薬効群と作用機序、開発時期等の観点から選定した代表的な医薬品を対象に、新旧のガイドラインおよび記載要領の比較、米国・欧州等の海外添付文書などの調査分析により、今般の各種ガイドラインおよび記載要領改訂をふまえた、規制上必要な記載内容、現行の記載内容から移行する際に不足しているデータ、さらに発展的に十分な事項・情報量を有する記載内容を明らかにし、具体的なモデルを作成して提案する。そして、審査報告書、医薬品リスク管理計画等も参考に、これらを充足するために追加で必要となる試験項目や実施方法などについても提案する。本課題研究の結果は、基本的な医薬品情報源たる新しい添付文書情報の適正充実化のモデルになるとともに、今後の医薬品開発の効率化、医薬品相互作用の防止等による適正使用の推進にも有益と考えられる。
設置期間
平成 29 年 4 月 1 日~平成 30 年 3 月 31 日
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000013
研究課題名
アスピリンの抗血小板作用に及ぼす非ステロイド性抗炎症薬の影響に関する研究:レセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究
代表研究者
真野 泰成 (東京理科大学薬学部)
要旨
課題研究の趣旨:
レセプト(診療報酬明細書)情報などの大規模医療情報データベースを利用し、心血管イベント発症をメインアウトカムとして、アスピリンの抗血小板作用に及ぼす非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の影響について検討する。

課題研究の背景(必要性):
 心筋梗塞や脳梗塞などの予防目的で低用量アスピリンを服用している患者が、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用する場合、これらの相互作用に関する情報は重要である。アスピリンとオブプロフェンとの併用については、アスピリンの抗血小板作用が減弱することが知られており、双方の添付文書において注意喚起がされている。
 我々は以前、アスピリンの抗血小板作用に対する影響を検討するために血液への in vitro 添加実験を行った。その結果、NSAIDs の種類によってアスピリンとの相互作用の程度が異なることが示唆された(医療薬学,36,382-391,2010)。さらにロキソプロフェンナトリウムとの相互作用について服用後の血小板凝集能を検討するため臨床実験を行った結果、アスピリンの抗血小板作用はロキソプロフェンナトリウムにより減弱することが示唆された。(医療薬学,37,69-77,2011)。
しかし、アスピリンの抗血小板作用に及ぼす NSAIDs の影響について、心血管イベント発症をアウトカムとした研究に関する報告は殆どないのが現状である。

課題研究の目的(期待される成果):
 本研究の目的は、レセプト(診療報酬明細書)情報などの大規模医療情報データベースを利用した後ろ向きコホート研究を行い、心血管イベント発症をメインアウトカムとして、アスピリンの抗血小板作用に及ぼす NSAIDs の影響について検討することである。また、2次アウトカムとしては NSAIDs の薬剤別および併用期間における心血管イベント発症リスクについて層別解析を行う。
 レセプト情報等のデータベースを利用したビッグデータ解析により、大規模な対象患者を対象としたコホート研究が可能となるのが本研究の特徴である。
 本研究は、心筋梗塞や脳梗塞などの予防目的で低用量アスピリンを服用している患者に対する医薬品の適正使用に繋がり、抗血小板療法に関するエビデンスの1つになることが期待される。
設置期間
平成 29 年 4 月 1 日~平成 30 年 3 月 31 日
連番
000012
研究課題名
医薬品情報(DI)担当者の研究教育能力を高める研修プログラムの開発
代表研究者
橋本貴尚(仙台市医療センター仙台オープン病院 薬剤部)
要旨
趣旨
研修プログラム開発を通してDI担当者の業務実践並びに研究教育能力を高め、各施設におい
て主軸として活躍できるようにすることが目的である。開発に先立ちニーズを把握するためのアンケート調査を行う。

方法
複数年のスパンで考えているが、1年目の計画か以下に示す通りである。
(1) 宮城県病院薬剤師会会員施設(約100施設)を対象に別紙に示す内容のアンケート調査
票を送付する。
(2) (1)回収し、DI業務の現状とニーズを分析する。
(3) 分析結果並びに研究メンバーの知見を踏まえ研修プログラムを試作する。
(4) 研究協力者のパックアップ体制に基づき研修会を企画しプログラムを試行する。
(5) 1 年目の実践結果に基づき、次年度に行うアンケートの素案を試作する。

期待される効果
薬剤師のDI業務の現状と学びたいニーズに関するアンケート調査を行い、その分析結果に基づいて研修プログラムを開発する。課題研究期間を通して研究協カ者のパックアップ体制を徐々に拡充させ、様々な職域の薬剤師に知識・技術を提供できるよう規模の拡大を図っていく。その結果、(1) DI担当者の研究教育能力が高まり薬剤師業務の主軸となる、(2) 学会発表・論文執筆に意欲的になる薬剤師が増加する、(3) 施設問の情報共有が可能となる、(4)中・長期的に薬剤師全体のベースアップが図れる。
設置期間
平成 28 年 4 月 1 日~平成 29 年 3 月 31 日
連番
000011
研究課題名
医薬品情報管理の効率化を目指した普遍的な医薬品情報の共有と統合
代表研究者
谷藤 亜希子
要旨
趣旨
各医療施設のDI担当者は医薬品情報を評価し一覧表等の形式に加工している。学会発表や学会誌の検索およびアンケート調査により,各施設で普遍的に必要とされる情報の種類や作成過程等を把握し共有と統合を目指す.

方法
本研究では,これまでに報告された学術論文や学会抄録集の調査と全国病院薬剤部DI室にしてアンケート調査を行なう。

期待される効果
各施設で二次加工された医薬品情報の種類を把握し、その資料作成にかかわる一次情報の種類,収集・評価方法を把握して精査することにより,DI室業務の標準業務手順書としても位置付けられることが期待され,情報リテラシーの集約により,情報の質が担保され適切な医薬品情報管理に繋がる。
また,普遍的に必要とされる情報を共有および統合することにより,各施設のDI担当者の業務時間は効率化される。これは,医薬品情報学の観点から新たなエビデンスを創出するために必要な環境整備にも繋がり,医薬品情報学全体の発展に寄与すると考えられる.
設置期間
平成27年4月1日~平成28年3月31日
連番
000010
研究課題名
製薬企業の医薬品情報に関するホームページにユーザーは何を望み、何を 感じているか
代表研究者
飯久保 尚
要旨
趣旨
製薬企業の医薬品情報に関するホームページ(以下HP)は企業毎に体裁が異なり、情報を見つけにくいことをしばしば経験する。また掲載されている 情報も企業によりバラツキがある。本研究ではHPのあるべき姿(案)を医薬品情報専門薬剤師等の意見を参考に作成し、それを元にアンケートを作成。ユーザー及びHP作成側の意見を求め、結果を解析してHPのあるべき姿を提言する。※今回は先発医薬品に関する情報に限定する。

方法
医薬品情報を専門にする薬剤師(医薬品情報専門薬剤師、日本病院薬剤師 会医薬情報部委員等)に情報が充実していると考えるHPを推薦してもらい、それを元に研究班でHPのあるべき姿・方向性(研究班案)を作成する。
その上で研究班案に対するアンケート調査(Webアンケート)を、ユーザー側(薬剤師100名程度、MR100名程度)とHP作成側(企業50社程度) に行い、様々な立場に立つ共同研究者と共にHPのあるべき姿・方向性についての提言をまとめる。

期待される効果
作成された提言を元にHP作成の指針作りが進み、HPの利用性の向上・標 準化が進むことを期待される。
設置期間
平成27年4月1日~平成28年3月31日
連番
000009
研究課題名
有害事象自発報告データベースを用いた高齢者の有害事象発現因子の解析
代表研究者
野口 義紘
要旨
趣旨
有害事象自発報告データベースを用いて高齢者に起こりうる有害事象シグナルを検出し、さらに医薬品ごとにシグナルを発現(変動させる)因子(併用薬剤,保有疾患など)を解明し、高齢者の適正な医薬品使用を可能にする。日本の医薬品情報教育の課題を明らかにする。

方法
有害事象自発報告データベースを使用し、高齢者の安全性シグナル(Proportional Reporting Ratios)の算出を行い、シグナルの検出された医薬品―有害事象の組み合わせを調査候補とする。さらに高齢者における対象医薬品使用による対象有害事象(Case)とその他の有害事象(Noncasc)と若年者のCaseとNoncaseのOdds比と95%信頼区間を算出し、調査候補を高齢者においてのみ有害事象がより起こりやすい組み合わせに絞り込むこととする

期待される効果
エビデンスに基づく高齢者に対して注意、または避けた方がよい薬品リストを作成することが可能になると考えられる。また、実際の高齢者は、複数の慢性疾患に罹患し、多剤併用をしていることが多いため、医薬品による有害事象の発現は、様々な因子の影響を受けることも予測されることから、有害事象発現リスクを変動させる因子の解明も必要である。これらの医薬品の探索・リスク因子の解明により、高齢の患者の罹患している疾患や併用医薬品、身体および臓器機能を総合的に考慮し、エビデンスに基づいた適正な医薬品使用の方法を提案することができると考えられる。
設置期間
平成27年4月1日~平成28年3月31日
連番
000008
研究課題名
FAERS を用いた自発報告データベースにおける周産期の有害事象報告の現状と分析
代表研究者
酒井 隆全
要旨
目的
妊娠中の医薬品副作用による胎児・新生児、母体に発生する有害事象の特徴を明らかにする。

計画
FDA が収集している副作用自発報告システム(AERS)から、妊娠中における有害事象の情報を抽出し、「母体の有害事象」と「胎児・新生児の有害事象」に振り分ける。その有害事象の特徴や患者背景との関連性を解析する。

期待される効果
妊娠中の薬剤使用による有害事象が明らかとなり医薬品適正使用につながる。
設置期間
平成26年4月1日~平成28年3月31日
連番
000007
研究課題名
薬剤師の医薬品情報リテラシー向上を目指した薬剤業務事例に学ぶ教材の開発
代表研究者
榊原 統子
要旨
目的
薬剤師の日常の調剤プロセス(処方せんチェック・一般調剤・服薬指導など)で生じる疑問を、医薬品情報関連資料・データベースを活用してリアルタイムに解決するために、臨場感溢れた情報リテラシー向上システムを開発することを目的とする。

計画
必要な医薬品情報へのアクセス方法、情報コンテンツの収集・評価・解析法などを提示し、動画、音声を盛り込んだ使用性の高い教材を創製する。

期待される効果
作成した教材を試験公開・評価を繰り返すことでコンテンツの質を高めることによって、最終的に薬剤師の医薬品情報リテラシーの向上へと導くシステムの構築が可能となる。
設置期間
平成26年4月1日~平成28年3月31日